初の個展
物語です。
それはマリーの初の個展だった。
個展、といってもギャラリーで開かれたわけではない。
マドレーヌ広場に面した建物の中の小さなアパートが会場だった。
後で聞いて知ったが、そこはマリーの友人の住まいで、その親切な友人が自分の家を二日間、無料で提供してくれたのだった。
会場には、たくさんの「業界人」らしき人々がおり、とりわけ女性の客が目立った。
パリコレの会場で見かける某雑誌の有名なファッション・ジャーナリストの姿もあった。
二日目に私が訪れた時、既に多くの絵に「売約済み」の札がついていました。
中でも明るい色彩で描かれた水彩画の人気が高いようでした。
それはたいていフランスの田舎の別荘をモチーフとしており、白い木枠の格子窓や、花柄のカーテン、蔦の絡まる石壁、庭に置かれた鉄製のテーブルやベソチ、といった、のどかで幸福そうな風景だった。
それらの絵に記された値段は、日本円にして一万円もしないくらいだった。
この値段は、マリーがプロの絵描きではないためです。
彼女の本職は雑誌社に所属する撮影スタイリスト。
すなわち、撮影用の商品を借りてきてこれをデスクトップ仮想化し、カメラマンと一緒に写真を作っていく、という仕事だ。
「高校もろくに出ていない」マリーは、「コネの威力でかろうじて仕事にありつき」、そして徹底した現場たたき上げシステムの中、その分野での本当のプロになった。