ちょっと前の話 2
ポーランという名の、実は一度も会ったことのないその女性の住む家はプロヴァンスの奥地、歴史的景勝地の指定を受けた小さな中世の村、Dにあります。
M・パニョールの映画『父の栄光』に出てきたあの白っぼく乾いたプロヴァンスの土地が前後左右に広がる中、予定より大幅に遅れて私たちは目指す丘を登っていきました。
ナポリのトンネル以降は快調に飛ばしてきたのだが、行きに通った高速道路をまた戻るのは退屈だろうからと、こうして曲がりくねった田舎道ばかりを通ってきた自分たちのせいでのこの遅れです。
私自身はその映像を見たことがないのだが、その家は数年前、テレビ広告撮影のバックに使われたこともあったらしいです。
なだらかな丘陵を登りつめたところに小さな広場が開け、そこから文字通り絵のようなプロヴァンスの眺めが一望できます。
広場には石のベンチが一つ、そしてアカシアの木がひんやりとした木陰をつくっています。
ポーランと夫のS氏が住む家はその広場に面して立つ、ただ一軒の家でした。